第379号コラム「サイバーセキュリティにおける『天動説』」
名和 利男 幹事(株式会社サイバーディフェンス研究所 理事 上級分析官)
サイバーセキュリティに関する数多くのレポートにおいて、サイバー攻撃に関する状況認識として、「高度化・巧妙化」という表現が用いられている。この表現から、攻撃側は「侵害や偽装の“技術”を向上させ、“手口(手法)”の改良(開発)を進め、攻撃が失敗しないようになってきている」という印象を受けるが、確かにこれは間違いない事実である。
一方、我々(以下、防御側)も、情報通信技術やインターネットに係る“技術”を向上させ、積極的に利活用するための“手法”の開発を継続的に進めている。つまり方向性や目的、活動領域は違えど、攻撃側、防御側の双方は同じような行動をしている。
第378号コラム「インターネットバンキングと不正送金」
本 憲太郎 幹事(株式会社NTTデータ 基盤システム事業本部 セキュリティビジネス推進室 シニアエキスパート)
1 発生状況について
インターネットバンキングにおける不正送金事件が無くなりません。平成27年2月12日に警察庁から公表された「平成26年中のインターネットバンキングに係る不正送金事犯の発生状況等について」によれば、平成26年度中に発生した不正送金の総額は約29億1000万円となっており、これは平成25年度の約2倍の額となっています。また、全国銀行協会が平成27年8月26日に公表した「インターネット・バンキングによる預金等の不正払戻し件数・金額について(平成27年7月発生分:速報値)」によれば、平成27年4月から7月までの不正送金は個人、法人合わせて432件発生し、その総額は6億5000万円に上るとのことです。