コラム第835号:「「民事判決情報データベース化検討会報告書」がまとまる」
第835号コラム:町村 泰貴 理事((成城大学 法学部 教授)
題:「「民事判決情報データベース化検討会報告書」がまとまる」
このコラム欄でたびたび紹介してきたように、法務省の民事判決情報データベース化検討会が2022年10月以来重ねてきた検討結果が報告書として公表された。
https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi09900001_00004.html
裁判所の判決は、法を解釈適用した結果であるから、その内容は法そのものの具体的な内容といっても過言ではなく、国民主権の原理から考えればその全てが主権者たる国民に公開されて然るべきものであった。その意味で、裁判所が先例的価値ありと判断したものだけを公開するという現在のやり方から、少なくとも民事判決に関しては原則として全件を公開するという方針に転換した今回の報告書は、国民主権の実質にかなった画期的なものと評価することができる。
コラム第834号:「史上最大規模の暗号資産流出事件と組織的犯罪処罰法」
第834号コラム:北條 孝佳 理事(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー 弁護士)
題:「史上最大規模の暗号資産流出事件と組織的犯罪処罰法」
1 はじめに
これを読まれる方の大半は、2018年に発生した史上最大規模の約580億円相当の暗号資産が流出した事件(以下「暗号資産流出事件」という。)をご存じであろう。この事件の犯人は捕まっていないが、関連する取引を実行した複数人が摘発され、1件は最高裁で有罪が確定し、少なくとも2件は2024年7月末時点で裁判中である。この裁判の争点の一つは、サイバー犯罪特有の国外が絡む問題であるため紹介する。